ヒューマンエラー |
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ヒューマンエラーは防げないと実感 |
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ヒューマンエラーを実感、ゾッとした体験談 |
ヒューマンエラーは、俺には 私には 関係がない と思っていませんか? 私もそうでした。 あの体験があるまでは。 あの体験でヒューマンエラーは、 ヒューマンエラーを引き起こす当人の一人の力では防ぐ手立ては無い、 と 実感しました。 以前の仕事は、ご案内の通り危険を伴う仕事(送電)の現場管理でした。 しかし、現場管理とはいえ完成に至るまでは鉄塔に昇ることは常でありました。 いくら慣れているとはいえども、恐怖心はあるものです。 もう20年以上になるので時効ですから話せるのですが、未だにあの瞬間は忘れられません。 結果的には何も起こらなかったのです。 しかし、もし私の愚かな行動で事故が発生していたら、 とんでもないことになっていたのは間違いありません。 私個人としては、プロとしてのプライドが打ち砕かれて、何も無かったからそれで良し、 では気持ちが治まらない感じでした。 その現場は、共同企業体でありまして、当時私が所属しておりました会社からの派遣は私一人で、 その現場の災害防止担当として派遣されていました。 役職とすれば安全のための管理指導ですので、鉄塔に昇ることは許されないのです。 しかし、工程上その日はどうしても鉄塔に昇らざるを得ない状況でありました。 慣れた鉄塔昇りですから、普段通り安全帯を着用し鉄塔に昇ったのです。 上部には作業員の方も2人おられました。
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その鉄塔は高さ30m程度ですので、私たちにすればとても低い部類でした。 当然の事ながら、鉄塔に昇る前は上部の状況や移動範囲を確認し、 それから昇って行ったのです。 目的箇所に到着したのでほんのちょっと一休みし、 上部で作業されている2名の方の邪魔にならぬようにしながら、 所定位置まで移動しようと思いました。 安全帯ロープは掛け替えながら移動するので、普通に安全帯ロープの掛け換え動作したのですが、 その瞬間、恐怖を通り越し背筋が凍りつきました。移動禁止区域を回り込んだのです。 ザワー!どころではありません。 安全帯ロープの掛け換え動作で、 腕をもう少し伸ばしていたら間違いなく感電死していたと思います(66,000ボルト)。 そして、電気を供給している一つの町に多大な迷惑をかけることになりかねませんでした。 更に、災害防止担当者という職にありながら感電死したとなったら、 その現場のみならず、 全国の業界全体にも波紋を広げる前代未聞の出来事にもなりかねませんでした。 状況としては、片側の電線は電気が流れて(66,000ボルト)いたのですが、 しかし、そのことが自分の頭から完全に消えていたのです。 電気が流れている側には行かないように表示する設備も設置していたにもかかわらず、 何にも考えないで所定の位置に移動することしか頭になかったのです。 この特別高圧線に近づいて感電死するケースはあるもので、 その災害を防止するための諸対策が施すのは当たり前になっているのです。 にもかかわらず、久しぶりに鉄塔に昇り頭が酸欠状態だったのでしょうか、 自分でも考えられない行動をしたことが本当に恥ずかしいと言うか情けなかったです。 今どんな作業しているのか考えなくとも分かるはずなのに、なんという軽率な行動であったか。 それも何秒とも動いていないのです。 ほんの数秒ですが頭の中が真っ白状態だったように思います。 これが絶対に避けられないヒューマンエラーを悟った瞬間でした。 そして、上部にいた1人は私の行動を見ていたようでしたので、 どうして注意してくれないのと聞いたら、 私のことだから片側の電線に電気が流れていることは当然分かっていることと疑もせず、 注意しなかったとのことでした。
そして、その約1ヵ月後には工事を無事に完成することができました。 それから数年して後、私の勤めていた会社の朝礼の時に、 私が体験したヒューマンエラーについて話しました。 「猿も木から落ちる」と言います。 我々人間ならなおさらのこと。 勘違いとかヒヤリハットとかいう問題ではなく、 頭の中が空っぽになるようなヒューマンエラーは個人では防ぎようがないのです。 たくさんの職業や職場がありますが、 若手や熟練者に関係なく引き起こされるかもしれない、 脳の空白によるヒューマンエラーによって誘発される災害を防ぐ手立てを、 それぞれの職業や職場に合った防御策や対策を考え、そして実行し、 少しでも災害を未然に防いで欲しいと思うのです。 |
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